フィールドワーク機材の選び方2 〜焦点距離と被写体との距離〜

August 13, 2018

 

先日、東京藝術大学の仲間内で説明したカメラの選び方をFacebookに上げたところ、複数の方から「参考にしました」「どれを買ったら良いかしら」「買っちゃいました」という嬉しい連絡を受けました。

確かにフィルムカメラの時代と違って、今は誰でも簡単に大きいボケがあったり、パッキリ写っている美しい写真をデジタルカメラで撮れるようになりました。フィルムカメラを使うようになってそれをひしひし感じます。それゆえにカメラマンでなくとも、現場やイベント報告の写真をブログやHP、SNSでアップすることを迫られているのかもしれません。やってることはフィールドワークと大差ありません。あたかも「1億総フィールドワーカー時代」とでもいいましょうか。

 

というわけで、何回かに分けてフィールドワークに向けた機材の選び方や撮影方法をお伝えしてみようと思います。

 

 

第2回(第1回はGoogle Documentだったので後日整理します)はカメラを選ぶ際に常に問題になるレンズの焦点距離と被写体との距離(ワーキングディスタンス)です。焦点距離とは何かと言うと、レンズの合焦位置とセンサーとの距離 y です(図1)。これが小さいほど広い範囲が撮れる広角レンズ、大きいほど遠くから撮れる望遠レンズとなります。

詳しくはまた別途説明を試みますが、画角θが異なるだけでなくいろいろな効果が出てくるため、世のおマニヤ様たちはレンズをいっぱい持つ(ことを正当化できる)わけです。

 

このとき、次の式が成り立ちます。

式1: h1:x = h2 :y

式1':y = x / h1 * h2

式2:tanθ = h1/2 / x

 では我々一億総フィールドワーカーにはどんな焦点距離のレンズが必要なのでしょうか。

 

これは撮りたい絵と、被写体との距離に依存します。

 

仮に対象を人体に限定すると、考えられるショットの種類はざっくり7種類。写真で見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上から順番に上の表のイメージでした。整理してみると違いが見やすくなると思います。

 

仮にこの中でミディアムショットが撮りたいとしましょう。これなら画面内に複数人を入れることもできます。

 

ここで最初の式2が生きてきます。165cmの人のミディアムショットはおよそ50%の82.5cm。人体比率は8等身としています。人体が画面内で90%の高さを占めるとすると、被写体の位置ごとに何mmの焦点距離のレンズが必要かが見えてきますね。

 

それを計算したのがこの表2です。

 

被写体から2mでミディアムショットを撮影する場合、52.4mm (35mm換算) 程度の焦点距離のレンズがあれば良いとわかります。もっと近づいて1mで撮影する場合は26.2mm、離れて8mで撮影する場合209.5mm程度のレンズがあればいいとわかります。

 

では逆に52.4mmのレンズを持っているときに、どんなショットが撮れるのでしょうか。

寄りに寄って0.5mの位置ではクローズアップショット、1mでバストショット、2mでミディアムショット、4mでフルショット、8mで引きが撮れるとわかります。

 

さて、簡単に「寄って」、「離れて」と言いましたが、貴方のフィールド環境はどうでしょうか?例えば獅子舞の奉納演奏などであれば、専用舞台の中で踊っている場合は寄れて2m程度かもしれません。ボリビアのカーニバルは前方に行進してくるので4mぐらいは距離を取らないと蹴り飛ばされます。地方創生系のツアーアテンドであれば、4mも離れて撮っていたら不審だし、0.5mまで寄るのもおかしい。だいたい1-2m程度の距離を保つのではないでしょうか。

インタビューをしてポートレートを撮るのであれば、対象に話しかけながら1-2mの位置から撮影するのがアマチュア的には普通でしょう(プロカメラマンは背景を狭く大きくぼかして整理するために望遠レンズを使います)。

 

どんな焦点距離のレンズを選ぶかおさらいです。

  1. まずはどんなショットが必要か分析してみましょう。論文や一般向けの書籍・雑誌、Facebookに流れてくるツアー報告の写真などが参考になると思います。

  2. 自分と被写体の位置を調整できるか、どのくらいの範囲の距離を取れるのか考えてみましょう。

  3. 表に合わせて最適な焦点距離を選びましょう。

  4. もしも焦点距離を1つに絞りきれないときは、複数のレンズを購入するかズームレンズを購入することを考えると良いと思います(この話はまた別項で)。

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以下、いくつか私の場合のレシピを書いてみます。レンズの焦点距離は実際に存在する定型的な長さに丸めています。

画質は1世代分落ちますが、X-E3でなく価格のこなれてきたX-E2をあえて選ぶのもありです。レンズなども中古で買うのが基本だと思います。

 

Plan A 三匹獅子舞の奉納神楽

  • 必要なショット:引き、フル、ミディアム、クローズアップ

  • 被写体との距離:2-8m

  • 焦点距離:50mm, 100mm, 200mm

  • オススメカメラ:FUJIFILM X-E3+XF18-135+XF90  or LUMIX TX2

Plan B インタビュー

  • 必要なショット:ニー、ミディアム、バストショット

  • 被写体との距離:1-4m (室内と仮定)

  • 焦点距離:50mm

  • オススメカメラ:FUJIFILM X-E3+XF35 f1.4

Plan C 一般人向けイベント、ツアーのアテンド

  • 必要なショット:引き、フル、ミディアム、バストショット、クローズアップ(手元など)

  • 被写体との距離:1-4m(室内と仮定)

  • 焦点距離:28mm, 50mm, 100mm (85mmで少し寄るもしくはトリミングも可)

  • オススメカメラ:FUJIFILM X-E3+XF18-55+XF35 f2, SONY RX100M3

 

Plan D コンサート撮影(最前列)

  • 必要なショット:引き、フル、ニー、ミディアム、バストショット

  • 被写体との距離:2m, 8m(引きを取るために一時後退)

  • 焦点距離:24mm, 35mm, 50mm, 100mm, 135mm,

  • オススメカメラ:FUJIFILM X-T2+XF16-55 f2.8+XF56 f1.2 or XF90 (2台体制も良いでしょう)

Plan E コンサート撮影(固定位置)

  • 必要なショット:引き、フル、ニー、ミディアム、バストショット

  • 被写体との距離:4m

  • 焦点距離:20mm, 50mm, 75mm, 100mm, 200mm

  • オススメカメラ:X-T2+XF16-55 f2.8 + X-T2+XF50-140 f2.8 (大三元ズームの2台体制が必須)

実際の環境では角度がついたりするので、被写体との距離の変動がありえます。その場合は焦点距離を更に揃えたり、ズームレンズを導入するのも良いでしょう。

例えばPlan Cの場合は標準ズームの24-70の範囲で大体を抑えて、クローズアップ用に必殺の85mm (各社ポートレートレンズ)などを選ぶのもありです。FUJIFILMの場合はXF18-55が27-84mmの焦点距離をカバーするため、これだけでも十分撮影が成り立ちますが、クオリティが必要な場合は50mmもしくは85mmのボケを出せるf値の小さいレンズを買い足すのも良いと思います。

今回もFUJIFILM押しなのは個人的に好きなのもありますが、それ以上に無編集でのJPEG撮って出しの色が良いため、RAW編集をしなくとも気軽に作品として使いうるためです。他のメーカーの色が好きのレトロ調ボディは親しみやすさがあり、いかにもな一眼レフより被写体との距離を縮めてくれるのも嬉しいところです。

FUJIFILM以外を薦めるとしたら同様にコンパクトなOLYMPUS のOM-Dシリーズ。動画を重視するなら Panasonic のG8, G9 PROあたりでしょうか。

 

ちなみに今回計算してみた事の発端は、私の現場で Plan A-D すべてが起こるが故だったのですが、結局28-200mmをカバーしつつ、ポートレートやコンサートでクオリティを出すために85mmと135mmのポートレートレンズも必要なようです……。更にBの現場には軽めに出かけたいので50mmの明るいレンズ、もしくはサブカメラが欲しくなります。

このようにしておマニヤ様のレンズは増えるわけです。合掌。


 

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