

よく斬れるマラカス
え、これ、全部マラカスの材料なの? オスワルド・ソラ、通称ウサギ、の工房を訪れた私は驚きの声を上げた。 家の前には無数のカンナの花。家の中には大量のボールと木棒が転がっている。 2014年3月、ベネズエラ民俗音楽最大の祭り「エロルサの祭り」へ参加するためにベネズエラに着いた私は、国境周辺の片田舎に有るエロルサへの出発に備えるため、カラカスの宿へと向かった。 羽田発の深夜便、パリで早朝のベネズエラ行き便へ乗り換え、危険な郊外への路面電車に乗る。30時間の長旅の終着点は、歴戦のマラカス奏者「ウサギ」が住むカラカスの郊外にある集合住宅だった。 当時60を迎えた「ウサギ」はいわゆる老音楽家で、現役の一線を退いてマラカスの製作を熱心に行っていた。 長旅の後なのに「ウサギ」と来たらお構いなし。 「さあ、こいつを振ってみろ」「こいつはどうだ」 家にあるマラカスの在庫を片っ端から持ってきて薦める。 「こいつもいいだろう」「これをエロルサに持っていけ」 なんとか数組を選んだところで、「ウサギ」はこだわりをカタリだした。 「マラカスは、タパラの実と カパーチョの種で